時をかける少女 〈新装版〉
筒井 康隆
テアトル新宿に
時をかける少女を見に行って来ました。
「時をかける少女」は、ご存知の方も多いと思いますが、四十年前に筒井康隆が書いたジュヴナイル小説です。それが今から二十年ぐらい前に、
原田知世が主演で映画化されています。また、これが初めてというわけではなく、原田知世版以前にはNHKのドラマシリーズがあり、以降も何度が映像化されています。
そんな昔の話が、アニメ映画になりました。ただしヒロインは原作や原田知世版の芳町和子ではなく、紺野真琴というオリジナルキャラ(和子の姪)になっています。
これで「え?」と思う人も多いと思います。実際、私も最初にアニメ化の話を聞いた時はそうでした。ところがこの映画、とてもよくできているのです。
和子は待つ女の子でした。彼女はタイムリープという能力に対して、常に受け身です。突発的に「巻き込まれる」しかなく、物語のラストでは、会えるかどうかわからない相手役のケンをずっと待ち続けます。
現代に時代をあわせて作られたこのアニメ版の真琴は、「待たない」女の子、「走る」女の子です。彼女はタイムリープに対して積極的ですし、自分の行きたい時間へ飛べます。決して優等生でもいい子でもないけれど、元気だけは有り余っています。そして、常に走っていますし、一直線に行動します。その結果、厄介なことになったりもしますが。そしてラストでは……ここは、まだ見ていない人の為に伏せましょう。ラストが気になったら、映画館へ行って下さい。
不思議な作品です。テーマは大きく変わっているのですが、それでもこれは、ある意味では「過去の作品に非常に忠実に作られた」「時をかける少女」なのです。原作や原田知世版を知らなくても一つの作品として確率しているので充分楽しめると思いますが、それらを知っているとそれはそれで楽しいのです。こんな映画は初めて見ました。
パワーと爽快感、明るい笑いと切ない涙が、90分という時間の中にぎゅっと凝縮されています。青春を過ぎた人には懐かしさを、その盛りにいる人にはシンパシーを感じさせてくれます。一人で行っても、友達で行っても、カップルで行ったとしても楽しめるでしょう。親子でも、小学校三年生以上ぐらいなら大丈夫じゃないでしょうか(これは私が原田知世版を見た年なのですが、当時普通に面白いと思いました)
残念なのは、この映画を上映している映画館が少ないことです。東京でも、
テアトル新宿でしか上映されていません。上映館すらない県もあるようですし、上映されたとしても一週間だけ、というところもあるようです。たくさんの人に見てほしい映画なのに、この状況は悲しすぎます。
少しでも興味をもったら、ぜひ見に行って下さい。それだけの価値はあると思います。
財布と時間が許してくれたら、私もまた見に行きたいなあ……。